部下から突然の退職届にどう対処?中小企業「7つの手順」と絶対してはダメな事
部下が深刻な顔をして「少し話があるのですが・・」。
社長や上司が一番聞きたくない、ドキッとする言葉では無いでしょうか。
今回は中小企業において、社員が突然辞めると言いだした時に
上司(または経営者)として、すべき手順や
「絶対にしてダメな事」をまとめました。
手順1:まず話を聞く
まず「なぜ辞めたいのか」理由を聞く
社員から退職を切り出されたら、すぐに引きとめたくなる・・。
そういった経験は、多くの上司や経営者ならば、あるかもしれません。
しかし引きとめる前に、先に「必ずすべき事」があります。
そして反面、先に「絶対してはいけない事」もあります。
必ずすべき事とは「まず話を聞く」こと。
絶対してはいけない事は「話も聞かずに引きとめる事」です。
ものすごく当たり前のはずなのに、どうしても「退職したい」と切り出されると、すぐに引きとめようとしてしまいます。
しかし「なぜ退職したいのか」、理由も聞かずに引きとめようとすると、仮に引きとめて止まる可能性がある人でも、その可能性すら潰してしまいます。
引きとめるのは「会社の都合」です。
辞めるのは「本人の都合」です。
この「両方の都合」がぶつかると、良い結果にはなりません。
退職したい理由を聞いた結果、それが「すぐ会社で解決できない」理由かもしれません。
ですから、まず「話を聞く・言い分を聞く」。
寄り添う姿勢がもっとも大切です。
そこからがスタートです。
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退職する側にも大きなストレスがある
私は中小企業の社長をしていますが、社員から退職を切り出されたら、私は引き止めません。
もちろん、本人が退職したい理由は聞きます。
その上で、自分の気持ち(一緒にこれからも働きたい)も伝えます。
しかし基本的には「相手の都合」を聞かずに、引きとめる事は絶対にしません。
なぜなら自分がサラリーマン時代に、退職する際に「ものすごく嫌な経験」をしたからです。
具体的には1週間、毎日「ほぼ軟禁状態」で説得されたからです。
私が退職したかった理由は2つ。
1つは、結婚しようと思ったため。
2つめは、給料の未払いが100万円以上あり、給料が毎月でなかったから。
私が勤めたその会社は、いまはもう倒産して存在しませんが
入社当時からずっと資金繰りで苦しみ、毎月未払い給料がある状態でした。
しかし私はその会社が好きで、上司が好きで、未払いがあっても平気でした。
そして5年間勤めました。辞めようと思ったことは一度もありません。
ところが結婚しようとなると話は別です。
毎月、妻に「今月も給料が出なかったね~ん。ごめ~ん。てへっ」とは言えません。
だから、給料が毎月ちゃんと支給される会社に転職するしかなかったのです。
しかし・・。退職したいと言ってからは、毎日毎日、個室に連れて行かれて、
上司や社長に「辞めるな!」と説得され続けました。
だから私は、自分が社長になったら「無理に止めない」というルールを決めました。
繰り返しますが、そもそも会社が好きだったので、給料さえ出れば辞めたく無かったのです。
だから退職したいと伝える時は、ものすごいストレスでした。
1か月ぐらい前から、すごく考えて悶々と苦しみました。
そしてやっと覚悟を決めて退職を伝えたのです。
その自分が経験したストレスを考えると、
自分の会社で社員が辞めたいと言った時は、理由も聞かずに、引き留めようと思いません。
社員が辞めると言うときは
強い覚悟と、大きなストレスがあります。
だから理由も聞かずに引きとめても、止まる訳がありません。
…
上司には「退職する本当の理由」は言わない
なお理由を聞いたとしても、上司や社長には「退職する本当の理由」は言わないものです。
そもそも同僚にすら、「本当の理由」は言わない人もいます。
だからと言って、「その退職理由はおかしくない?」と、深くつっこではいけません。
なぜなら、上司や社長には特に言えない事があるからです。
そもそも多くの人は、退職する時に「もめて辞めても良いことは1つもない」と思っています。
「本音を言えばもめるだけ。相手のプライドを傷つけるかもしれない。」
だから本当の理由は言わないのです。
ですから「大人の対応」も大切です。
突っ込んで「本当の事」を聞いても解決しない事もあるので、
「おかしな理由だな」と思った時は、引き留めずに
「そうか。分かった。」と受け止めるのも、相手によっては必要です。
手順2:引き止める
今後も一緒に働きたいという「気持ち」はちゃんと伝える
相手の言い分を聞いた後は、
「自分の気持ち」を伝えましょう。
つまり「感情」を伝えます。
今後も一緒に働きたいと思うのであれば
「あなたと一緒にこれからも働きたい」という
想いを伝えることが大切です。
その気持ちが少しでも伝わった上で、
「退職理由」を1つずつ潰していいけば(解決策を提案)、
中には、退職を引きとまる人もいます。
しかし「感情」を伝えていないのに
先に「理屈」を伝えても、まず伝わる事はありません。
上司と部下の前に、人と人です。
「かまって欲しい」「自分を見て欲しい」部下もいる
退職したいと言ってくる社員の中には、
「もっと話を真剣に聞いて欲しい」、
「もっと自分を正しく評価して欲しい」のが本音の人もいます。
「もっとかまって欲しい」「もっとちゃんと見て欲しい」。
まるで子供の理屈に聞こえますが、上司と部下の人間関係が濃い場合は、
こういったケースもあります。
ちなみに技術職の美容師さんでは、よくあるケースです。
技術的な師弟関係がある場合、
「じっくり部下の話を聞いた結果、退職するのを思いとどまった!」という話をよく聞きます。
だから部下がどんなタイプなのか。
どんな気持ちで退職を伝えたのか、見極めることも大切です。
引き止めても、辞める人はやっぱり近い将来に辞める
なお、これは私の経験則ですが
退職を踏みとどまっても、一度辞めると言った人は
やっぱり近い将来に辞めます。
もちろん退職理由と、踏みとどまった理由にもよりますが
退職理由が「社内で解決しない状態」が続くようなら
当たり前ですが、踏みとどまっても、やはり近い将来に退職します。
ですから、もしその社員が踏みとどまり、
そして今後もずっといて欲しいのであれば、
1か月以内に問題を解決する必要があります。どれだけ長くとも6か月です。
それ以上長く、問題が根本解決しない限りは、
「辞める」と一度口にした社員は必ず辞めます。
最短1か月・最長6か月のタイムリミットの中で、その問題を解決しましょう。
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「人はいつか辞めるもの」だと割り切るのも必要
まだ独立して間もない社長たちから
「退職が引き止められない社員がいるけど、どうしたら良い?」
という相談を受けることがあります。
そこで私は、自分が独立するときに、
多くの社長に教えてもらったアドバイスをそのまま伝えます。
すっぱりあきらめましょう。
「人はいつか辞める」ものです。
円満退職でも、定年退職でも
いつかは辞めるのです。
そもそも、あなたも
独立する前に会社を辞めてきたでしょ。
自分は辞めてきたのに
「社員だけは辞めない」なんて、
そんな都合の良い話はありませんよ。
・・・そういうと、多くの社長は
「それもそうだね。」と、次の社員の採用に目を向けます。
手順3:退職スケジュールを決める
退職日と有給(有休)の消化を決める
退職の合意ができたら、正確な退職日を決めます。
この時、有給休暇が残っている場合は
その処遇について話しあいます。
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なお退職日は、退職を申し出てから
平均的に3ヶ月後の会社が平均的です。
(会社規定による)
また有給消化について、多いパターンでは
仮に10日の有休がある場合、10日前まで通常勤務して、
残りの10日は有給消化しています。
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なお私の会社の場合、
2か月~3ヶ月後の月末に退職日を設定する事が多いです。
そして有休消化期間は設けず、残った有休日数は買い取って
最後の月の給料で支払っています。
なお、このあたりは会社によって
各種規定が変わるので
詳しくは社労士さんに相談してください。
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退職届を提出してもらう
退職日が決まったら、
必ず退職届を先に提出してもらいましょう。
そして、本人の意思で退職するのですから
「自己都合により・・」などの文面が必要です。
なぜなら「自分で辞めた(自己都合)」と
「会社に辞めさせられた(会社都合)」では
大きな違いがあるからです。
例えば失業保険も、
会社都合なら、すぐに支給されますが、
自己都合なら、3ヶ月後からしか支給されません。
そのため、自己都合で辞めたのに
退職後に「会社に辞めされられた」と言って、トラブルを起こす人も稀にいます。
そのため、後で「言った・言わない」にならないよう、
自己都合で退職することを証明するために
退職届を提出してもらいましょう。
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引継ぎ内容を決める
あとは退職する社員が担当していた仕事を
誰が、どうやって引き継ぐのか具体的に決めます。
営業職の場合であれば、顧客の引継ぎが必要ですし
技術職の場合は、ハイキャリアの人ほど
最低限度の技術継承をして、引き継ぐ必要があります。
退職後に、実務で困って退職者に連絡をとる・・なんて事は
連絡する側も、される側も気をつかってストレスがかかります。
ですから、お互いのため、
また取引先に迷惑がかからないように
引き継ぐ内容を具体的にしましょう。
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手順4:「退職日までの」の約束事
出来るだけ「綺麗な辞め方をする」ことをお願いする
退職日までの期間、引継ぎなどを含めて働いてもらう際に
退職する社員に、絶対に守って欲しいこと伝えます。
それは
「出来るだけ綺麗な辞め方(去り方)をする」
という事です。
つまり、退職日まで「態度よく働いてもらう」という事です。
その理由として以下を伝えて、理解をしてもらいましょう。
● 退職後、未来でどこで仕事や縁があるか分からない
● やる気のない態度は、周りから嫌われる
● 今の世の中、次の転職先から突然「内定取り消し」を受けて失業する場合もある
その代わり、そのために会社が協力できる事はサポートする事も約束して下さい。
・そのために会社が出来ることも約束する.
「会社の悪口や批判をしない」ことをお願いする
もうひとつ、退職する社員に伝えて
必ず理解してもらうことがあります。
それは、
「会社(や上司)の悪口を残る社員に言わない」事です。
なぜなら、退職する人の言葉や態度を見て
「残る社員に悪影響を及ぼす」こともあるからです。
「立つ鳥、後を濁さず」
これを理解してもらってこそ、
お互いに良い関係で別れることが出来ます。
なお、そうは言ったものの、
実際に退職が決まってから、極端に態度が悪かったり、
残る社員に会社の悪口を言いまくる人が実際にいます。
そういった人の場合は、逆に
「いてもらっては困る」ので
残念ですが、1日でも早く辞めてもらいましょう。
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手順5:求人応募(中途採用)をはじめる
中途採用の「3つの求人募集の手段」
退職者が決まったら、
現在のメンバーだけで仕事が回るなら問題ありませんが
多くの中小企業では、欠員を埋める必要があります。
そこで一番に
「求人広告媒体」を使おう・・と、する会社も多いと思います。
もちろん広告媒体を使っても構いませんが、
それは「中途採用・3つの求人手段」の中で、最後の手段です。
そこで、その「3つの求人手段」と
使うべき順番を解説します。
①自社採用サイトとindeed(インディード)を使う
まず、1番にすべきなのは
「自社サイト」で求人募集することです。
なぜなら自社サイトでの求人が
もっとも「早く」
もっとも「安く」
もっとも「良い人材を獲得できる」
からです。
この時、自社採用サイトとindeed(有料版)の組み合わせが
最っとも効果を発揮します。
この手法については、説明が長くなるので
以下のメールセミナーで解説しています。
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②ハローワークに求人掲載をする
2番目のステップが、ハローワークです。
無料で求人募集できるうえに、
さらに日本ナンバー1の求人サイト「indeed(インディード)」にも
求人内容が連動して掲載されます。
そのため、絶対に掲載した方が良いです。
ハローワークの掲載もせず、
求人広告媒体だけに頼った採用戦略は
今後、さらに苦しくなります。
なお、
「いまどきハローワークから人は来ない」
「ハローワークからは優秀な人が来ない」
という、採用担当者や経営者の声を聞きますが、
決してそんな事はありません。
地域密着の中小企業に限定するなら
ハローワークからでも、優秀な人材の応募はあります。
自社サイト(ホームページ)から
応募が無い企業は、
●見た目が悪かったり、
●スマホ対応になっていなかったり、
●掲載する求人原稿の内容に問題があったり・・
など、大きく「5つの問題点」があると
自社サイトからの求人は難しいです。
これについては、以下のブログ記事で解説しています。
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③求人広告媒体を使う
自社サイト、ハローワークの準備が出来たら、
最後の最後に、求人広告媒体を検討します。
もちろん、「自社サイトの仕組み」さえ出来れいれば
求人広告媒体を使う必要はありません。
ただし募集が極めて困難な職種や緊急性に応じて、
求人広告媒体を組み合せるのはアリです。
魅力的な自社サイト + 求人広告媒体 の組み合わせは
短期間での効果が出やすいです。
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手順6:退職日にすること
送別会は出来るだけしよう
退職する社員の性格や、「辞め方」にもよりますが
出来る限り送別会はした方が良いです。
そして、社長や上司は
今まで共に働いてくれた感謝を伝えましょう。
退職する社員に「綺麗な辞め方」をお願いする以上、
会社側も「綺麗な送り出し」をするのがマナーです。
どうしても退職する際は、お互いに感情的になって、
その関係性を作るのは難しい場合もありますが、
優秀な社員であれば、
「また戻って来たい」
「この会社を去るのはもったいなかったな」
と思ってもらえれば、未来に縁が再びあるかもしれません。
また、今後は取引先に就職して
ばったり会う事もあるかもしれません。
どこで人と人がつながるかは分かりません。
なにより、去る社員に対しての「上司や社長の姿勢」を
残る社員はしっかり見ています。
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保険証の返還や各種書類手続き
退職日には、必ず「社会保険証」を返還してもらいましょう。
他にも退職時、または退職後に資料をつくり
郵送などで渡すものがあります。
<例>
・雇用保険被保険証
・退職証明書
・離職票
・源泉徴収票
これらの資料は、退職する社員が
次の就職先が決まっている場合は特に、
「何の資料が欲しい」と言われるので
事前に報告を受けて準備しておきましょう。
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手順7:環境を改善する/失敗から学ぶ姿勢
退職理由の中に「いまの会社の問題点」が隠れている
退職したい理由をまず聞くのは、他に理由もあります。
それは退職理由の中に、「会社のいまの問題点」が隠れているからです。
この先に絶対に防がなくてはいけないのは、
「同じ理由」で他の社員が辞めることです。
だから「退職したい理由」の中から、どんな問題が社内で起こっているのかを把握し、解決する必要があるのです。
風呂の浴槽に穴が開いているのに、それを直さずに新しい水を埋めても、水はたまりません。
つまり社員が辞めた後に、新しい社員が入社しても、やはり同じ理由で新しい社員も辞めます。
見方さえ変えれば、「退職する理由」の中に、
会社が今後さらに伸びる・変えられる大きなチャンスがあるのです。
..
「同じ理由」で辞める人を作らない
ちなみに私の会社の場合は、
社員が「退職する・・」といった時に
A : 超緊急レベル(すぐ改善すべき問題)
B : 急ぎレベル(6か月以内に改善する問題)
C : しっかりレベル(1年かけて徐々に改善)
3つに分けて考えました。
そして「A:緊急レベル」の問題は、1か月以内にすぐに変えました。
具体的には「給料が低い(自分のスキルと給与が見合っていない)」のが退職理由の社員がいました。
私はそれが、退職する「本当の理由・全ての理由」とは思いませんでしたが、
少なくともそれは「A:緊急レベル」の問題だと思い、すぐに給料規定・賞与規定を変更しました。
これは私が社長の立場だから出来たのでしょうが、
問題があった時に「問題の本質は何か」を深堀りする必要があります。
なお今もうちの会社には、解決できていない「他の問題」がたくさんあります。
しかし「すぐ解決できない問題」も多いので
それを1つずつ解決できるように、日々改善しています。
これはどの会社も同じです。
常に問題は「隠れて」たくさんあります。
それが表面化していないだけで、いつかその問題は必ず爆発(表面化)します。
表面化した時は、次に同じ問題が起こらないよう
レベルに応じて、出来るだけ早く改善しましょう。
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中小企業で社員が辞めるのは「すべて社長のせい」
最後に、私が中小企業の社長だからこそ
常に思う事があります。 それは、
中小企業で人が辞めるのは、
すべて「社長のせい」だという事です。
これが、従業員数100人以上の中小企業になると
また少し事情は変わりますが、
100人以下の企業では
社長の考え方が、そのまま企業文化になっています。
社長は、
上手くいったら全て他人(社員やお客様)のおかげ。
失敗したら全て自分(社長)のせいです。
優秀な人材が集まるように、
優秀な人材が残り続けるように、
お互いに、良い会社を作って行きましょう。
お読みいただき、ありがとうございました。
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