中小企業の「採用基準」を決めるコツ/欲しい人材・募集ターゲットを具体化する方法
「欲しい人材」からの応募が無い。
しかし「来ない理由」は
実は募集ターゲットの決め方に問題があるかもしれません。
実は募集ターゲットを明確にするだけで、
欲しい人材からの応募は確実に増えます。
そもそも、あなたの会社は
「どんな人を採用したい」が具体的に欲しいのでしょうか。
そこで中小企業の経営者・採用担当のための
「採用基準」の考え方や
募集ターゲットの決め方・整理方法を解説します。
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「良い人が欲しい」って、具体的に「どんな人」なのかを明確にしよう
欲しい人材(ターゲット)の具体化は
採用活動でもっとも重要です。
なぜならターゲットによって
●「何を伝えるか(内容)」も
●「どうやって伝えるか(方法)」も
全て変わるからです。
もっと掘り下げて解説すると、
ターゲットを具体化する真の目的は、
その募集ターゲットが
「欲しいこと」や「不安」をイメージするためです。
そして、その欲しいことや不安を解決する内容を
「求人原稿」に内容にきちんと伝えることで、
欲しい人材からの応募は間違いなく増えます。
つまり「ターゲットが具体的」であればあるほど
良い結果につながるのです。
募集ターゲットを具体化するとは
では「ターゲットを具体的にする」とは
どういう事でしょうか。
例えば「良い人が欲しい」「優秀な人が欲しい」
という声を経営者からよく聞きます。
では「良い人」や「優秀な人」とは
具体的にどんな人なのでしょうか。
多くの場合、
「良い人」は「性格が良い人」、
「優秀な人」は「地頭が良い人」
という回答が返ってきます。
ではさらに具体的に
「性格が良い人」「地頭が良い人」とは
どんな人なのでしょうか・・。
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何が言いたいのかというと
「良い人」も
「優秀な人」も
「性格が良い人」も
「地頭が良い人」も
具体的ではないという事です。
もっともっと掘り下げて、例えば「優秀な人」であれば
「●●と●●と●●の3つを持っている人」など、
具体的な定義を決めない限り、
ターゲットを具体化したことになりません。
顔が見える求人原稿/顔の見えない求人原稿
ターゲットを具体化するとは、
「欲しい人」のスキル・性別・年齢・性格も含めて、
「顔が見える」状態に
イメージすることです。
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実際に多くの企業の求人原稿を見た時に、
採用が上手な企業ほど
「どんな人に来て欲しいのか」が
イメージできます。
つまり
「誰に向かって伝えているのかが分かる」
「顔が見える」求人原稿です。
逆に採用が上手くいかない企業ほど、
誰に向かって伝えているのかイメージできない
「顔が見えない」求人原稿が多いです。
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欲しい人のスキル・性格・年齢を「見える化」する方法
ではどうやって「顔が見える」状態にまで
ターゲットを具体化するのか。
お勧めする方法をご紹介します。
それが以下の3つのステップです。
ターゲットの具体化 3つのステップ
■手順1
求める人材の「能力」や「特徴」を箇条書きにする
■手順2
箇条書きにした中身を「マスト・ウォンツ表」に分類分けする
■手順3
ペルソナ(人物像/年齢・性別・性格・習慣など)を決める
ではこれを、
さらに詳細に解説していきます。
手順1:求める人材の「能力」や「特徴」を箇条書きにする
まず必要なスキルや性格など
何でも構いません。
欲しい人物の
「能力(スキル・経験)」
「特徴(性格・性別)など」
出来る限り箇条書きにしてください。
最低でも10個、出来れば20個以上書ければ
次の手順にいきます。
手順2:箇条書きにした中身を「マスト・ウォンツ表」に分ける
次にその箇条書きの内容を、以下の表の
・「絶対必要(マスト)」と
・「あれば嬉しい(ウォンツ)」
に振り分けて記入してください。
その能力・スキルは「本当にに必要か」?見直してみる
この時、1つ注意点があります。
それは「この特徴は本当に必要か」と
自問自答しなおす事です。
入社後に教えて身につけられる事は
「あれば嬉しい(ウォンツ)」に入ります。
教育できない(後で身につきにくい事)や
教育する気がない事(持っていないと採用しない)
「絶対必要(マスト)」に入ります。
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手順3:ペルソナ(欲しい人物像)を決める
欲しい条件が整理できたら、
それをもとに
募集ターゲットの性別・年齢・性格などの
人物像(ペルソナ)をイメージします。
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中小企業ほど「応募者のイメージ」が出来ていない実例
やってみると分かりますが、
「絶対必要」と「あれば嬉しい」に振り分けてみると、
意外と「絶対必要」と思っていたことが、
「あれば嬉しい」に入るものがあります。
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これは中小企業の社長である、私自身が実感した事ですが、
私も求人広告を作る前に、これをやり直してみました。
そして表に振り分けた時に
正直、愕然としました。
なぜなら自分が思っていた「絶対必要」な事は、
実は「あれば嬉しい」に
ほとんど入ってしまったからです。
いかに「欲しい人材」が
曖昧で漠然としていたかを実感しました。
簡単に出来る「採用募集ターゲット」の決め方
ちなみに、もっとも簡単な方法は
自社の社員をモデルにすることです。
もし、あなたにとっての「理想の人」が社内にいない場合は、
AさんとB君の良いところを合体させても構いません。
2人の良いところを箇条書きにして、
表にそれらの特徴を振り分け、
欲しい人の性別・年齢・性格・スキルを決めます。
例えば「5年間勤続する技術力が高い人」がいるとして、
その人をモデルにターゲットにするとします。
ではあなたの会社では具体的にどんな人が
「5年間辞めない」のでしょうか。
性別や年代や性格はどんな人で、
仕事において何を大切にして、
何を求める人でしょうか。
さらに具体的に「技術力が高い」とは
何で判断しているのでしょうか。
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だから、まず紙に箇条書きにして表に振り分け、
頭の整理をする事から始めましょう。
中小企業は「能力」より「愛せる人」を選ぼう
最後に、私自身が自社で「採用する基準」をご紹介します。
私の会社は求人と集客を専門にしたホームページ制作会社ですので、
社員のほとんどはデザイナーなどの技術者です。
そのため、今まで何度も技術者を面接・採用してきました。
そして忘れもしない、
私が独立してはじめて技術者を採用しようとした時の話です。
私はたくさん人を雇用している取引先の社長にまず相談しました。
するとこんなアドバイスをくれたのです。
「中川君、はじめは能力で選ばずに、自分が『愛せる人』かどうかで選ぶんやで。」
しかし私は
「でもどんなに性格が良くても、技術力がない人を雇っても時間と手間ばかりかかるしなぁ・・」と思い、
せっかくアドバイスをいただいたのに真逆のことをしました。
つまり技術力(能力)を基準に採用したのです。
結果は・・。
経営者の方なら簡単に想像できると思います。
半年もせず、私と大もめして辞めました。
いま思えば私の器量の無さが問題で、その社員のせいではありません。
しかし退職した日に、私はあまりのショックに
泣きながら、取引先の社長に電話しました。
するとその社長は笑いながらこう言ってくれたのです。
「なっ、人って難しいやろ。
ワシの会社も何人も辞めてきた。
何人も雇い、何人も育てて、何人も辞めてを繰り返して、
ワシの会社は少しずつ大きくなってん。
どんな会社も同じやで。
みんなそうやって失敗を繰り返して大きくなるねん。」
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そして忘れもしない、こう付け加えてくれたのです。
「だから会社が小さい時は、
自分が『愛せる人』を採用しなさいって言ったんやで。
人って失敗するねん。
あなたが失敗するように、社員もいっぱい失敗するねん。
社員のミスで代わりに頭を下げる事なんて何度もある。
お金の損失もいっぱい出す。
時には殴ってやろうかと思うぐらい、
自分本位で腹が立つこともいっぱいする。
でもな・・。
どれだけ技術力があっても、
『腹が立つ人』を体をはって守ってやろうと思うか?
心の底から、その社員の未来をつくってあげたい、
給料を上げてあげたいって思うか?
思われへんやろ。
だから能力じゃなく、
『愛せる人』を雇いなさいって言ったんやで。
愛せる人なら体もはれるやろ。
代わりに謝れるやろ。
未来を作ってあげたいやろ。
技術力なんて、時間があれば後で身につくやん。
でも性格は後では変えられへんで。」
その社長の愛のあふれる言葉をいただいて、
最初にいただいたアドバイスの真意がやっとわかって、また泣いたことを覚えています。
そして今ならわかりますが、どれだけ技術力で選んでも、
実際に「即戦力」なんていません。
どれだけ能力が高くても、自社の仕事を本当に理解して、
かつ利益を生み出せるようになるまで、早い人でも半年はかかります。
しかし言い換えれば、
半年もあれば、技術力がない初心者であっても、
やる気さえある人なら、十分に貢献できる人に育ちます。
もちろん、私の会社にはそんな初心者をイチから一生懸命に育ててくれる、
私が信頼して、「愛している」社員たちがいるからこそできます。
「愛せるかどうか」の人柄で採用しているので、
社員はみんな誠実で真面目で努力家で性格の良い人しかいません。
私はそんな社員と一緒に働けることを誇りに思っていますし、
本当に感謝しかありません。
だから社員が退職する時には、一人になった時に情けなくて泣きます。
なぜなら去る社員が悪いのではなく、
小さな会社は社長が会社そのものですから、
社長の自分に原因があって去っていくのを申し訳なく思うからです。
去る理由を作っているのは、すべて社長です。
だから
「能力ではなく、愛せる人を選ぶ」。
これが私のたった1つの採用基準です。
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あなたの会社が、ぜひ素晴らしい人材を採用できるよう
心より願います。
お読みいただき、ありがとうございました。